2014年5月31日土曜日

ジャック・カロをやってみる

 みなさん、こんにちは。『8 -エイト-』の演出助手のスタッフKです。

 突然ですが、みなさんジャック・カロってご存知ですか?映画監督?いえいえ、それはジャック・タチです(余計わからない)。ジャック・カロとはバロック期に活躍し、短い生涯で1400点以上もの作品を残した版画家なのです。現在、国立西洋美術館で展覧会が行われています(ちなみに、ジャック・タチの特集上映もイメージフォーラムで今度やります、はい、すみません)。

 前回の稽古では、3つのグループを作り、このジャック・カロの作品を実演しました。実演って何?と、みなさま思うかもしれません。実演といっても写実的に演じるわけではありません。ジャック・カロの作品に表現されているイメージやエッセンスを掴み取って、それを三次元の世界で表現してみる、というものです。

あるグループはカロの『「ローマの絵画」:聖ステパノの殉教』に挑戦していました。(http://collection.nmwa.go.jp/G.1987-0015.html)さて、カロの作品を見てから演じるまで約10分という限られた時間の中で、このグループはこの絵をどのように解釈し、表現したのでしょうか。

 ある女の人が男の人をぼこぼこにしています。これでもかってくらい突き飛ばしています。その周りでは女性が手をひらひらとさせて笑顔で見守っています。女の子が恐ろしげに眺めています。女の人は男の髪を引っ張って蹴り飛ばしました。そして、ついに凶器(といってもポーチかなんかだったと思いますが)を手に取り!!!「はい!」と恐ろしげに眺めていた女の子が言うと、全員の動きが止まりました。女の子は正面に出てきて椅子に座ります。そして一言、「この人今から、殉教します!」ニコニコ。

さて、なぜこうなったのか想像できますか?実際に、ジャック・カロの『「ローマの絵画」:聖ステパノの殉教』を見てみると、主に4種類のキャラクターに分けられると思います。聖ステパノ、ステパノを殺そうとする者、それを眺める群衆、そして天から見守る天使。なので上の芝居で言うと、男が聖ステパノ、ぼこぼこにしていた女の人がステパノを殺そうとする者、恐ろしげに眺めている女の子が群衆、手をひらひらさせている女性が天使、を表しているんですね。しかし、おもしろいのはここからです。カロの作品をよーく見てみると、左前の女性が何か変だと思いませんか?この人、一人だけ「視点」が違うように見えます。みんな殺される聖ステパノを眺めているのに、この女性だけ「われわれ」を見ているように思えます。そして、地面を見てみると、この女性がいる場所だけちょっと黒くなっていませんか?この女性、「視点」だけではなく、「空間」的にも他の人と違っているのです。このようなことから、この女性はカロの作品を見ている私たちに「この人、殉教するんだよー」と紹介する役割を果たしているのではないか、というのがこのグループの見解であり、それを芝居にして演じたのです。それにしても、10分でここまで考えて演じられるなんてやっぱり俳優ってすごい!


 ということで、「ジャック・カロをやってみる」でしたが、これってどう『8 -エイト-』と関係あるの?と思った方も多いでしょう。しかし、これが関係あるのです!ジャック・カロがどう『8 -エイト-』と繋がるのか、7月の本番でお確かめ下さい。チケット絶賛発売中です!https://ticket.corich.jp/apply/55498/

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