2014年6月22日日曜日

キャストインタビュー !ウォーカー判事役 : 西山真来さん

 こんにちは、スタッフSです。今回は稽古レポートではなく、「8 -エイト-」に出演するキャストのインタビューをお届けしたいと思います。
8 -エイト-」は一般公募のオーディションで集まった俳優を起用しており、個性派の方々が揃っています。本番まで、そんな俳優さんたちの素顔を、ちょっとずつインタビュー記事にて紹介していきます。
初回の今回はウォーカー役の西山真来さんです!



(インタビュー:2014.6.14.中目黒)

― オーディションに応募したきっかけを教えて下さい。

西山:きっかけは『緑子の部屋』(※)を観て、すごい面白い感覚を感じたことですね。劇を観てきたこと、それ以外の経験も含めて、今までの人生の全部の体験の中で初めての感覚だな、これはっていう。まだ名付けられてない感覚を自分の中に感じたんですよね。そういうことを求めて生きているので、これはと思って応募しました。
 (※)8 -エイト-」の演出を担当している西尾佳織さんの主宰している劇団・鳥公園の公演

― 面白い感覚、自分にとって未知の感覚を求めて?

西山:そうそう、未知の感覚とかそういうのを求めて、いろんなところに行く動機になっているので。

― 実際、『緑子の部屋』を演出した西尾さんと一緒にやってみてどうですか?

西山:ちゃんと迷うところをすごい信頼しています。こうやったらまとまるみたいな方向にすぐ行く人は全然信用していないので。

― 安易な答を求めないということ?

西山:そうそう、モヤモヤしていることを、モヤモヤしたままにできるところ。ものごとを分かろうとするために、人はすぐ法則みたいなものを見つけたいと思うし、カテゴライズしたいと思いがちですよね。それをギリギリまでやらないでいようとするところが、すごいと思います。

― 映像と劇の両方のお仕事をされていますが、映像と劇で違いを感じることはありますか?

西山:うーん(しばらく悩む)。最近、元々は演劇の演出をやっている方が撮った『あおいちゃんの星座』という映画を観て、それがすごい面白かったんですね。普通の映画のキャスティングは、パッと見て役のキャラクターに見えるということがすごい大事で、例えば、ゲイの役だったらパッと見てゲイに見えるとか、妹の役だったら妹に見えるということが重視されると思うんです。けど、『あおいちゃんの星座』は役のキャラクターと演じてる役者自体が遠く見えて、それが面白かった。黒だけど黒だけには見えないという感じのキャスティング。舞台では、役と人間が遠いけど、でも演じる、というのが許されることが多いと思うんですけど、そういうやり方を映像でやっている『あおいちゃんの星座』を観たら、映像でも全然面白いやんって思いましたね。

稽古中の西山さん

― 「8 -エイト-」に関わる前に、同性婚やセクシュアルマイノリティについて考えたことは?

西山:全然なかったです。日本においてどうあるべきか、というのも考えたことがなかった。

― 考えるようになって、変化したことはありますか?

西山:8 -エイト-」を始めるにあたって、いろんなイベントとか勉強会に出ましたけど、知らなかったことを知っていく中で、びっくりして、ちょっと傷ついたような気持ちになったところがあるんですけど。

― 西山さんが?

西山:そう、私が。セクシュアルマイノリティの方たちのあり方が「自分の権利を守る!」みたいなガチガチした感じに見えた時があって、私は私で「こっちの権利を守る!」みたいに気持ちが反応してしまったんですよね。「自分は○○の当事者です」という言い方で発言する方がけっこういらっしゃって、「なんで『○○の当事者です』って言わなきゃ喋れないんだ」とか、いろいろ考えてしまって。
 でも、そこから考え方が変わってきましたね。そういう風に感じていた時は、この人たちは仮想敵と戦っていると思ってたんですよ。自分の周囲を見回しても、あからさまな同性愛嫌悪の人なんてあんまりいないと思ってたから。でも、「8 -エイト-」を始めてから、知人にセクシュアルマイノリティとか同性婚の話をしてみる機会が増えると、「ああいうやつらのことなんか、こっちは気にしねえから」みたいな反応が返ってくることもあって、身近にもこんな風に言う人がいるんだ、って驚く経験がありました。仮想敵なんかじゃないんだなって思うようになって。だから今は、怖いから考えたくないみたいな状態に、またなってる感じです。

― 行ったり来たり?

西山:そう、行ったり来たりしてる。
今日の稽古の中でも、良かれと思って善意として人を受け入れる態度というものについて話が出たんですけど、私自身もそういう態度をよくとるんですよね。人を受け入れるって自分が上に立っているから言えることだから。そのことは、今、考えがぐるぐる変化してることとも関係あるなって、今まさに思っています。

― なるほど。意見が違う相手を受け入れる時に、上の立場から受け入れてあげてる、というような善意?

西山:そうそう、善意は、自分が世の中を把握できている感覚が無いと生まれないというか。社会は今こうなっていて、社会に対して自分はこうしたい、自分は俯瞰してますよ、みたいなところがあって、相手を下に見てるというか。私の演じるウォーカー判事もそういう面があると思うんですけど、それに自分では気づいてないと思うんですよね。ちょうど今日の稽古で、そんなことを考えてました。

― 自分がウォーカー役と聞いた時はどんな気持ちでしたか?

西山:あんまり、けんけん言うタイプじゃなくて、柔らかく話す感じの人なのかなって思ったくらいでしたね、最初は。
台本を通して読んだ時は、裁判が最初から原告側に偏った流れで進むなと思いました。特にウォーカー判事の言動が。ウォーカー判事の状態が、全体の中ですごい大事だと感じましたね。ハリウッド版のブラッド・ピットが演じているのを見た時も、ああいう、「かっこいい!」「この人正義!」みたいな感じになったら、日本でやる上ではちょっと違うかもと思いました。
でも、いろいろ考え方が変わってきて、そう感じていたのも随分昔のような気がしますけどね。

― 今は、ウォーカーというキャラクターに対してどんな気持ちですか?

西山:今は、さっき言った上から目線の善意みたいな部分が、自分に重なるところがあって、気持ち悪さを感じる時がありますね。カッコ付きの善意みたいなやつに。例えば、知人が同性愛にあからさまな差別発言をしたことに対して、私は一瞬いらっとするけど、いらっとする根拠はなんなんだって感じることとか。別に自分が何か言われた訳じゃないのに「それは悪いことだよ」って相手に指摘するけど、指摘している私は誰だみたいな感じがあるなって思って。だから、ウォーカーを演じるのは怖い部分がありますね。


(スタッフS)
 なるほどー。ご自身の深い部分からテーマについて考えていて、頭が下がります。実は、オーディションをした時は、セクシュアリティやLGBT関係の活動歴は全くの不問にしていて、むしろ、LGBTに関わったことの無い人たちが、「8 -エイト-」をきっかけにいろんなことを感じて考えてくれたら嬉しいね、という話を実行委員会ではしていました。その時の期待以上に、真摯に考えてくれていて、実行委員会としては嬉しい限りです。

 次回以降のキャストインタビューにもご期待ください!


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